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2019-11-17  チャレンジャーの回答(A氏のクレームドラフティング)

 

先日、「チャレンジャー募集」ということで、

クレーム案を募集しましたところ、7名の方が応募下さいました。

 

応募して下さった7名の皆さま、どうも有難うございました。

お約束通り、応募いただいた7つの案について、コメントさせて頂きます。

 

まず、問題内容の確認と、私が考えていた「一応の答え」を示したいと思います。

 

問題文はこちらです。

チャレンジャー募集

 

 

それから、なぜ「答え」ではなく、「一応の答え」なのかですが、
クレームの内容は、さまざま要因によって変わるべきもので、
何が「答え」なのかは、ケースバイケースですし、
唯一の答えがあるものでもない、というのが前提になるからです。

 

しかしながら、絶対に落としてはいけないポイントもありますので、
ポイントを落とさずに記載してあれば、
それは良いクレームということになると思います。

 

<一応の答え>

それでは今回の場合のポイントはどこかを考えてみたいと思います。

 

まず、発明の特徴(1)から、「成分Xと成分Yとを含む」という点が挙げられます。

よって、「成分Xと成分Yとが必須成分のガラスの発明」をクレームする必要があります。

 

また、発明の特徴(2)から、「成分Xが30~50%である」という点が挙げられます。

 

そして、発明の特徴(3)から、「成分Xと成分Yとの合計が90%以上」という点が挙げられます。

ここで、問題文には「成分Xと成分Y以外の成分の合計は10%以下とすべき」と記載されていますので、

これをクレームに入れてもよいでしょう。

(なお、ここで「超」と「以上」の区別(成分X+成分Y=90%をクレーム範囲内とするか否か)は議論しないことにします。)

 

そして、上記3つの特徴からクレームを作ってみると、以下のようになると思います。

すなわち、以下の「請求項Z」が私の案(一応の答え)です。

 

【請求項Z】
成分Xと成分Yとを必須成分として含有し、
成分Xの含有率が30~50質量%であり、
成分Xと成分Yとの合計含有率が90質量%以上である、ガラス組成物。

 

 

繰り返しになりますが、クレームに唯一の正解はないので、上記以外でも有り得ます。

 

例えばですが、1行目は無くてもよいと思います。

また、2行目が「成分Xを30~50質量%含み」でも良いでしょうし(同じ意味なので)、

末尾は単に「ガラス」でもよいでしょう(ガラスとかけばガラス組成物を意味しているので)。

 

しかし、問題文からすると、本発明の特徴を含む発明は、

おおむね上記【請求項Z】の発明のようになると思います。

 

 

それでは以下では、応募いただいた7名の方のクレームについて考えていきたいと思います。

 

■A氏の案■

成分Xと成分Yからなる主成分のみ、又は90質量%以上の該主成分と他の成分から、得られるガラスであって、
前記主成分のうち成分Xが30~50質量%で残部が成分Yである、
ことを特徴とするガラス。

 

 

A氏は機械系の独立弁理士さんで、ガラスのような化学系の発明は扱っていないので、

自信がない、とおっしゃっていました。

 

たしかに、技術分野ごとに、ある程度、書き方は変わりますので、

自分の得意分野以外の場合、どのように書くべきか、考えてしまいますよね。

 

A氏の案は、その概ねの意図は、上記の請求項Zと同じと思います。

 

おそらくですが、請求項Zの発明を少し拡張させようとしたのではないかと推定します。

 

A氏の案について、気になる点は以下の2つです。

 

[気になる点の1つ目]→「主成分」の定義について

 

クレーム内に「主成分」という文言を用いた場合、

多くのケースで「主成分」とは「どの程度の含有率であることを意味するのか不明確」

という拒絶理由がでます。

ここで、明細書中に「主成分は何%以上を意味しているのか」

を定義すれば、上記「不明確」の拒絶理由はでません。

 

ちょっと、話がずれますが、テクニックとして、

明細書中に「主成分とは70%以上を意味するが、この含有率は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい」と定義を記載しておけば(数字はケースバイケースで変える)、

拒絶理由通知において「主成分が85%である引例があるので新規性がない」と判断された場合でも、明細書中の主成分の定義を90%以上に補正することで、新規性を出すことができます。

テクニックはともかく、A氏の発明を請求項の欄に記載したときに、「主成分」を明細書中に定義することが必要になります。

 

(ただし、技術分野(食品分野等)によっては「主成分」の定義が明細書に記載されていなくても不明確とならないケースもあります。ただし、不明確との拒絶理由がでるリスクをとらない書き方をするのがプロですので、結論としては「主成分」の文言をクレームに書いた場合は、その定義を明細書の記載する、とすべきです。)

 

ここでA氏の明細書に「主成分」の定義をどのように書くかですが、

「含有率が90%以上」と書かざるを得ません。

 

主成分、すなわち、成分Xと成分Yとの合計は90%以上が必須だからです。

 

そうすると、請求項の1行目の「成分Xと成分Yからなる主成分のみ、又は90質量%以上の該主成分と他の成分から、」

 

における「90質量%以上の」の文言は書かない方が分かりやすいと思います。

 

よって、この部分は「成分Xと成分Yからなる主成分のみ、又は該主成分と他の成分から」と書くか、

単に「成分Xと成分Yとを主成分とし」と書いておき、

明細書中に主成分の定義を記載しておけば良いと思います。

 

結局、この部分は

 

成分Xと成分Yとの合計含有率が90質量%以上である、

 

と言っていることと同じになるので、

【請求項Z】と同じとなると思います。

 

 

 

[気になる点の2つ目]→「プリアンブルに本発明の特徴部分を書くか」について

 

「であって」、「において」の前の部分をプリアンブルといいます。

 

この部分には、従来技術を書くべきで、本発明の特徴部分は書くべきではない、

 

と私は考えています。

 

 

これは、外国出願、特にUS出願を考慮しています。

 

US出願のクレームではプリアンブル部分は、

従来技術であると自任していると判断される可能性が高いからです。

 

一方、日本では、そのように解釈されることはないことになっています。

 

ただし、日本に出願した後、USへ優先権主張出願する可能性があることを考慮すると、

日本に出願するためのクレームであっても、

US出願に耐え得る状態にしておくことが必要だと私は考えています。

 

したがって、上記の通り、

「プリアンブルに本発明の特徴部分は書くべきではない」

と私は考えています。

 

ここでA氏のクレームを見てみると、
「であって」の前の部分は以下の通りです。

 

成分Xと成分Yからなる主成分のみ、又は90質量%以上の該主成分と他の成分から、得られるガラスであって、

 

 

つまり、プリアンブルに、本発明の特徴部分が記載されています。

 

この点が私は気になります。

 

上記の私の気になる2点を勝手に変更させて頂くと、
A氏のクレームは以下のようになります。

 

<A氏の案の修正案>
成分Xと成分Yとを主成分とし、
前記主成分のうち成分Xが30~50質量%で残部が成分Yである、
ことを特徴とするガラス。

 

(そして明細書中に主成分は90%以上の含有率であることを定義する)

 

 

こんな感じが良いと思うのですが、いかがでしょうか?

 

 

長くなってしまったので、他の6名の回答およびコメントは、後日、掲載いたします。


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