• 化学、材料、食品系特許の実務

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2016-09-13  ベンチャー企業の知財戦略

以前、日本弁理士会の知的財産価値評価推進センターから私へ来たメール(メーリングリスト)に、クリノ株式会社という東北大学発のベンチャー企業の知財戦略が紹介されていました。

以下、そのメーリングリストのコピーです。
————(ここから)
会社を設立してしばらくの間は、基本特許を出しロイヤリティー獲得を狙うというライセンス取得の戦略を採ってきたが取引実績のないベンチャーの提案は大手企業に簡単に受け入れられなかった・・・・・
最近は、基本特許をベースにして共同開発を持ちかけ、その後試作品や受託加工で市場に出した後に、ロイヤリティー収入で安定した収入を得るという戦略を採っている・・・・・・・
————(コピー終わり)

つまり、このベンチャー企業は、自社で製造販売する資力がないので、他社に製造販売してもらって、特許のロイヤリティ収入を得たいが、なかなかそれを引き受けてくれる会社が見つからない。そこで、大企業と共同開発して製品化までを手伝い、その後、製造販売は大企業にやってもらい、大企業から基本特許のロイヤリティを払ってもらう、という戦略です。

このような「自社では研究開発のみを行い、工場はもっていないので、製造販売は他社に依頼する」という業態は多くはないと思いますが、一般的な企業の場合でも、本業とはちょっと違う発明が見出されて、それについて特許を取得できたので、ライセンスで儲けられないか、などと考えたというような場合、同様な戦略になるように思います。

この戦略でもっとも重要なことは「大企業へ共同開発を持ちかける前に、自社単独の強力な基本特許を取得すること」です。

この基本特許を取っておけば、一緒に共同開発した大企業から基本特許のロイヤリティを払ってもらえることはもちろんですが、さらに別の会社へのライセンスが可能になります。

つまり、大企業が製造販売しているものと同じもの(または類似するもの)を、さらに別の会社に作ってもらい、その会社からもロイヤリティを得ることができます。

この基本特許が無い場合、契約等により、特許とは無関係に、一緒に共同開発する大企業から何らかのロイヤリティを得ることはできる思いますが、さらに別の会社からもロイヤリティを得ることは、まず不可能でしょう。

ただし、大企業と一緒に共同開発した成果によって特許権を取得した場合、この特許権が邪魔になって他社へライセンスができなくなる可能性はあります。このベンチャー企業が他社へライセンスしたい場合、共有特許の権利者である大企業の同意が必要となるからです。

ベンチャー企業から見ると、大企業との共同特許を、どうやって狭い範囲の弱いものにしてしまうかがポイントになると思います。
逆に、大企業から見ると、共同特許をいかに広くて強いものして、他の会社を排除するか、または他の会社からロイヤリティ収入を得るかがポイントになると思います。


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