• 化学、材料、食品系特許の実務

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2019-02-21  「課題について」の研修のまとめ

  

昨日の夜、弁理士会会館で

特許法上の諸論点と「課題」の一気通貫

(サポート要件・進歩性の「課題」を中心として)

と題する研修会を受講してきました。

講師は弁護士・弁理士の高石先生。

  

かなり役立ちました。

以下に私の復習を兼ねて、まとめを記します。

(1)サポート要件における「課題」と、進歩性における「課題」は同じものを指している。

(2)「課題」を下位概念でとらえる(つまり具体的にとらえる)と、サポート要件を満たし難くなる。一方で、進歩性は認められやすくなる。逆も同様。

(3)H27年頃から、H30年5月の「ピリミジン大合議判決」まで、課題を具体的に認定して「サポート要件×」とする判決が多かった。しかし、ピリミジン大合議判決後は、課題を上位概念でとらえ、「サポート要件〇」とする傾向がある。

(4)H27年頃から、H30年5月の「ピリミジン大合議判決」までの間の裁判例として、例えば知財高判平成27年(ネ)第10114号「医療用ガイドワイヤ事件」では、本発明の課題は「従来のハンダよりも固着強度が高くなる」ではなく「従来のハンダよりも2.5倍程度、固着強度が高くなる」ことであると認定され(つまり、従来よりも少しだけ(1.1倍とか)固着強度が高くなっただけではダメ)、そのうえで「従来のハンダよりも2.5倍程度、固着強度が高くなるハンダは明細書中に十分に記載されていない(実施例の一部だけしかそれを満たしていない)のだから、サポート要件を満たさない、と判断された。

(5)「ピリミジン大合議判決」後として(「後」ではなく「前」のような気がするが、・・・という理由で(理由は忘れました)、「後」に分類されるらしい)、知財高判平成26年(行ケ)第10008号「外来遺伝子導入法」事件が挙げられる。
 この事件では、課題は「効率アップ」であり、「効率が80%以上アップすること」ではない、と判断された。つまり、課題は下位概念として認定されなかった。そのうえでサポート要件はOKと判断された。

(6)「ピリミジン大合議判決」後では、発明が限定解釈され、課題を解決できない構成は発明の範囲外と判断されている。この場合、当然、サポート要件はOKとなる。(クレーム範囲のうち、サポート要件を満たしている部分だけが発明の範囲である、といっているに等しいので、サポート要件を満たすに決まっている。)

 このような裁判例として、東京地判平成29年(ワ)第18184号「骨切術用開大器」事件、知財高判平成30年(行ケ)第10041号「地殻様組成体の製造方法」事件が挙げられる。

(7)「ピリミジン大合議判決」後として、知財高判平成29年(行ケ)第10129号「ライスミルク」事件は重要。

 ここでは、明細書の発明の詳細な説明等の記載から、本発明の課題は「コク、甘味、美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」であり、異議決定が課題を「実施例1-1のライスミルクに比べて国、甘味、美味しさについて有意な差を有するものを提供すること」と認定したことは誤りであると判断した。

つまり、異議が課題を下位概念化して認定しことを誤りであると判断した。

(8)ソルダーレジスト大合議判例では、課題と直結していない構成については上位概念化してもよいと判断された。

これによって、補正、分割の範囲は、格段に広がった。

例えば審査基準の附属書Aの事例7では、「成形面の形状が課題解決に直接関係していないのであれば、「・・・凹面状の成形面」を「・・・成形面」に補正してもよい」と言う内容の解説がなされている。

また、知財高判平成26年(行ケ)第10087号「ラック搬送装置」事件では、「測定ユニットを懸下」(→下にあること)を、「測定ユニットを保持」(→下だけではない」とする補正が認められた。

(9)近年は、課題の範囲が広くとらえられてサポート要件が認められる傾向があるので、その広めの課題を解決する手段として発明をとらえて進歩性が身と笑められるように考える。逆に、進歩性が認めさせるために課題を狭くとらえてここれを主張した場合、サポート要件が認められにくい方向になってしまう。

(10)発明の「課題」に関する、無効審判請求人側の主張戦略。
→進歩性、サポート要件、補正要件(新規事項追加)、実質的変更の各無効理由を通じて、特許権者が主張する「課題」の齟齬をつく。

①進歩性を議論して、具体的な「課題」を主張する方向に誘導する。

②当該具体的な課題はサポートされていないと主張する。

③拡張分割/補正~「課題」の解決に直接関係する構成の削除があれば、分割/補正違反を主張する。

④訂正~「目的、効果=課題」変更があれば、実質的変更を主張する。

(11)発明の「課題」に関する、特許権者側の出願戦略、主張戦略

→当初明細書の記載も、出願後のサポート要件の主張も、進歩性に必要がない高いレベルの「課題、目的、効果」を記載、主張しない。

→進歩性が確保できるのであれば、それ以上に「下位概念化された課題」が本発明の課題であるとしてしまうと、サポート要件が認められにくい方向になってしまうから。

とりあえず、高石先生の本を買うことにします。

 


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