• 化学、材料、食品系特許の実務

  •  

2020-01-29  「日用品」の発明のクレームは、なぜ書きにくいのか?


(上の写真は、第1回「特許の鉄人」第1試合にて私に課されたお題。この「ぐい呑み」をクレームせよ)

 

 

一昨日、初めてツイッターを始めました。

 

ツイッターは、十数年前には存在していましたが、

当時の私は特に興味もなく、

ツイッターを始めることはありませんでした。

 

ただし、アカウントだけは作ってあり、

記録によると、

私がツイッターのアカウントを作ったのは2011年のようです。

したがって、9年くらいは放置していたことになります。

 

しかし、ここ1年くらいの間にお友達なった弁理士の皆さんが
ツイッターで楽しんでいるのを見て、

「自分もやってみようかなぁ」

と思うに至り、ついに一昨日、ツイートしてみたわけです。

 

今一つ、操作方法が分からないのですが(→完全に年寄り)、

こういうものは習うより慣れろだろ、

と開き直り、

適当にコメントをしてみたり、いいねのマーク(ツイッターではハートマーク)を付けたりしていました。

  

そして、とある方のツイートに対して、

「日用品はクレームに書くのが難しい」

と軽い気持ちでコメントしてみたのですが、

その後、

ところで、なぜ、日用品はクレームするのが難しいのだろうか

と今更ながらに考えてみました。

 

その検討結果を書くと、ツイッターで書ける文字数(140字?)を超えそうなので、

ここに書いてみようと思います。

例えば、従来の鉛筆とは一部の形状が微妙に異なる「鉛筆の発明」について、

発明者から相談を受けたとします。

 

ただし、その微妙な形状の差異が、珍しい効果を発揮しているとします。

 

日用品はすでに様々な形状や材質のものが存在していて、

発明における従来技術との差異が微妙であることが多いと思います。

その微妙な差異が明確になるようにクレームすることが、まずは難しいと思います。

 

次に、この発明者から発明内容を聞いて、よく考えてみると、

この発明は鉛筆だけではなく、シャープペンシルにも、ボールペンにも適用できるとします。

 

このように、発明者が検討したのは鉛筆についてだが、

発明自体は他の類似品にも適用できる、というケースは多くあります。

 

というか、発明者が考えたアイデアを技術的思想ととらえて、

発明の外殻をできるだけ拡張してあげるのは、

私のような(自称)プロが必ず行うべきことでしょう。

 

ここで、プロとしての仕事を放棄して、

発明者のアイデアを「鉛筆の発明」ととらえてクレームして良いのであれば、

難易度はかなり下がります。

 

「・・・・という部位が・・・という形状を備える鉛筆。」

 

のように書けば良いだけです。

 

しかし、このクレームの場合、権利化できたとしても、鉛筆にしか権利範囲が及びません。

 

そこで、鉛筆、シャープペンシル、ボールペンを含む何らかの概念をかかげ、

これを設定したうえで、さらに特徴部分を入れ込む必要があります。

 

したがって、クレームの中に「鉛筆」という文字は書けなくなります。

 

鉛筆は誰でも知っていますので、

クレーム中に「鉛筆」を登場させることができれば、発明を定義することは簡単ですが、

鉛筆を登場させずに、鉛筆を含み、さらにシャープペンシルやボールペンを含む概念を設定することは容易ではありません。

 

これは、世の中に鉛筆というものが存在しなかったときに、鉛筆を発明した人が特許を取ろうしている行為に近くなるでしょう。

 

まず、「鉛筆が存在していなかったときに鉛筆を説明するための文章であって、かつ、シャープペンシルもボールペンも含むもの」

のようなものを考え、

 

そのうえで、従来とは微妙に形状が異なることを明確に設定して行くわけです。

 

「鉛筆が存在していなかったときに鉛筆を説明するための文章」のようなものを

考えるだけでも難しいと思いますが、

さらにシャープペンシルとボールペンを含むようにして、

そこに特徴部分を入れ込んでいくこともかなり難しい作業になります。

 

こんなことから、「日用品」はクレームするのは難しいのではないか、と思っています。

 

ちなみに、以下は、以前に私が書いた「ちょっと変わった形状ペットボトル」に関する発明のクレームです。

特許査定がでています(特許第5442155号)。

 

本当は請求項はいくつかあるのですが、以下に【請求項1】のみ、記します。

当時、私はこの請求項を考えるのに、20時間くらいかかったような記憶があります。

 

【請求項1】
ボトル本体とキャップとを有し、
前記ボトル本体は口部および胴部が一体に形成されており、
前記口部は、その外周に雄螺子ならびに水平方向への突起部をなす環状の顎部およびフ
ランジ部をこの順に上から下へ向かって有しており、
前記キャップは、キャップ本体、キャップリングおよびこれらを繋げるブリッジとを含
み、
前記キャップ本体は、その内周に、前記雄螺子と螺合する雌螺子が形成されていて、前
記雌螺子と前記雄螺子とが螺合することで前記キャップが前記口部を閉じることができる
ように構成されており、
前記キャップリングはリング状であり、その上端が、少なくとも1つの前記ブリッジを
介して、前記キャップ本体の下端と連結されており、その内径は前記顎部の外径よりも大
きく形成されていて、前記顎部の外側に隙間を有した状態で嵌るように構成されており、
さらに、前記キャップリングの内側には、前記顎部の下端へ下方から係合可能な少なくと
も1つのストッパーが軸心方向に突出するように形成されていて、内容物が前記ボトル本
体に充填された後、前記キャップを前記口部に螺合する際に、前記ストッパーは前記顎部
を通過した後、その上端が前記顎部の下面に係合するように構成されているボトル型樹脂
容器であって、
前記顎部と前記フランジ部との間にこれらを繋ぐ長高円筒部を有し、
前記長高円筒部の高さ(H)は10~20mmであり、
前記長高円筒部の側面は正面から見ると直線であるためテーパー角を一義的に決定でき
、そのテーパー角は60~80度であり、
前記ブリッジが前記キャップリングの外周側に形成されていて、
内容物を前記ボトル本体から排出するために前記キャップ本体を前記雄螺子および前記
雌螺子の螺合を解除する方向に回転させると、前記ブリッジがせん断力を受けて破断して
前記キャップリングが前記キャップ本体から離れ、その結果、軸心が鉛直方向となる状態
とすることで前記キャップリングが自重によってその下面が前記フランジ部に接するよう
に落下して前記フランジ部の上に留まり、前記キャップリングの上面と前記顎部の下面と
の間に前記長高円筒部の側面が露出することで開封済であることが判断可能に構成されて
いるボトル型樹脂容器。

 

 

 

なお、この発明をクレームする際の難しさは、
そもそもペットボトルは、形状も大きさも様々なものがあるので、
単に「ペットボトル」と請求項に書いても形状が特定されないことから、
当該発明の効果が発揮される形状を検討し、その形状を設定したうえで、
さらの特徴部分を入れ込んでいく、ということかと思います。

ちなみに、このペットボトルの発明(特許第5442155号)の権利化には
かなり苦労しました。

 

拒絶理由通知にて、恐ろしく近い発明(ほぼ同じ)が指摘され、
その引例をかいくぐったうえで、さらに進歩性までをも認めさせる必要がありました。

そのあたりの経緯は、すべて、

の第3章の「本発明は課題が新規との理由で進歩性を認めさせる方法」に記載いたしましたので、

そちらをご覧ください。

(すみません、宣伝で終わってしまいました。)


本ページが更新された際に、その旨をメールで連絡します。ご希望の方はメールアドレス・姓名を入力し、「確認」ボタンをクリックして登録してください。
メルマガ登録欄
メールアドレス(必須)
氏名(必須)
TOPへ戻る