プロダクト・バイ・プロセス・クレームについて調べてみようと思い、ネットでいろいろな文献等を探してみたところ、よさそうな文献を見つけました。
こちらです。↓↓↓
藤井康輔著、「プロダクト・バイ・プロセス・クレームと明確性要件」、知財管理 Vol.67 No.9 2017
この文献では、プロダクトバイプロセスクレームに関する最高裁判決「プラバスタチンナトリウム事件」(平成27年6月5日判決、平成24年(受)1204号、同2658号)の後に出た、この最高裁判決に則っているとは言えない3つの裁判例を挙げ、実務での対応方法を提案しています。
以下に、超重要部分のみ、メモ的に記載してみます。
最高裁判決では以下のように判断されています。
「物の発明についての特許にかかる特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6号2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」
そして、この最高裁判決の後に出た裁判例の中で、この最高裁判決に則っているとは言えないものとして、以下の3つの裁判例が挙げられます。
1.知財高裁平成28年9月20日判決、平成27年(行ケ)第10242号、「二十瞼形成用テープまたは糸及びその製造方法」(特許第3277180号)
2.知財高裁平成28年9月29日判決、平成27年(行ケ)第10184号、「ローソク」事件(特許第4968605号)
3.知財高裁平成28年11月8日判決、平成28年(行ケ)第10025号、「ロール苗搭載桶付田植機と内部導光ロール苗」事件(特願2011-87735号)
これらから言えることは次の通り。
①特許請求の範囲に、形式的にその物の製造方法の記載があっても、当該製造方法による物の構造又は特性等が明細書の記載および技術常識を加えて判断すれば一義的に明らかであり、単にその物の状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合は、物の製造方法の記載には当たらない。
→この場合、PBPクレームでは無いのだから、36条6項2号に該当するか否かを検討する余地がない。
②特許請求の範囲に、その物の製造方法が記載されていると判断されても、明細書の記載および技術常識から、その物の状態または手順を示すことにより構造又は特性を明確にして表しているのであれば、「例外として」、不可能・非実際事情の主張立証を要しないか、又は法36条6項2号との関係で問題とすべきPBPクレームとみる必要はない。
③上記②の例外が適用できない場合は、最高裁判決に則り、不可能・非実際的事情があるか否かを検討し、あるのであれば「発明は明確」と判断し、無いのであれば「発明は不明確」と判断する。
※上記の①~③は、主にこの論文の図4に基づいています。