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2019年4月4日
包帯禁反言を考慮した意見書の書き方

初めに、意見書の書き方を間違えたために、包帯禁反言の法理に基づき、権利範囲が狭くなる典型例を挙げます。

 

本発明は特許査定が出て特許権が成立したものとします。

また、その請求項1 の内容は「成分A および成分B を含むゴム組成物」とします。

そして、この特許権が成立する過程における拒絶理由通知に対して、出願人(特許権者)は意見書において「本願発明は、成分A および成分B の他に、さらに成分C を含む発明である」という内容を記載したとします。

このような場合、特許権が成立している請求項1 の権利範囲は、文言上は「成分A および成分B を含むゴム組成物」であっても、「成分A、成分B の他に、さらに成分C を含むゴム組成物」と解釈される可能性があります。

  

また、意見書では、拒絶理由通知における審査官の認定を認めるような記載をする必要はありません。意見書に、例えば「審査官殿が認定されたように、引用発明1 と引用発明2 から想到する発明には○○と言う効果があるが」と記載すると、後の手続き(例えば拒絶査定不服審判など)を行う際に、上記と逆の主張、例えば、「引用発明1 と引用発明2 とを組み合わせても○○という効果はない」といった主張をし難くなる可能性があるからです。

 

それではどのように記載するべきでしょうか。

いくつかの書き方があると思いますが、例えば「仮に、審査官殿が認定されたように引用発明1 と引用発明 2 から想到する発明には○○と言う効果があったとしても」のように記載する方法が挙げられます。

 
同様に、審査官が引用発明1 と引用発明2 を組み合わせて本発明の進歩性を否定したような場合に、意見書において、「引用発明1 と引用発明2 を組み合わせることができるが、本発明とは効果が異なる。」のように「組み合わせることができる」と認める必要はありません。

この場合、例えば「引用発明1 と引用発明2 を、仮に組み合わせることができたとしても、本発明とは効果が異なる。」と記載すれば、組み合わせることができると認めてないので、後の手続きにおいて、「阻害要因があるので組み合わせることができない」のような主張が行いやすくなります。

 

「引用文献1 には○○(発明の要約)という内容の発明が開示されている。」というように発明の要約を記載する場合があるが、これにはリスクを伴うことを認識したほうがよいです。

通常の当業者レベルよりも知識が豊富な者が引用文献1 を読んだ場合、実際に引用文献1 に記載されている内容から様々なことを思いついてしまい、実際には引用文献1 にはもっとレベルの低い発明しか記載されていないのに、レベルが高い発明が記載されていると誤認してしまう場合がああります。特にレベルが高い発明者はそのように考える傾向が強いと言えます。

 
このようにレベルが高い発明者が引用文献1 に記載の内容を要約してそれを意見書に記載した場合、引用文献1、すなわち従来技術として、本来、引用文献1 に記載されていた内容よりも高い内容が記載されていると認めることになりかねないです。その場合、相対的に、本発明のレベルが下がってしまうことなり、進歩性が認められるハードルが高くなってしまします。

これを図に書けば、次のようになるでしょう。


このリスクを回避するためには、引用文献1 に記載の内容の要約ではなく、引用文献1 に記載の通りにその内容を意見書に記載したほうが良いことになります。

 

上記について、具体的に実際の拒絶理由通知と、それに対応した意見書の具体例(実物)が拙著「進歩性欠如の拒絶理由通知への対応ノウハウ」のP105~114に示されています。よろしければそちらをご参照ください。

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